はじめに
視覚支援は、特別支援教育や放課後等デイサービスの現場で、子どもたちにわかりやすい指示を提供するための重要なツールです。視覚的に情報を伝えることで、子どもたちが活動内容を理解しやすくなり、自分の行動を適切に選択する手助けができます。今回は、視覚支援の中でも「禁止」を伝えるカードと「促進」を示すカードの効果について、考察していきます。
「禁止」の視覚支援の効果と影響
「はいりません」のカードなど、禁止を示す視覚支援は特定の行動を抑制するために使用されます。これは危険箇所や立ち入り禁止エリアを明確に伝えるのに効果的ですが、その効果と影響を理解することが重要です。

1.強い「禁止」のメッセージが行動を抑制する効果
危険な場所への立ち入りや、特定の行動を禁止する際には、はっきりとした「してはいけないこと」を伝えることで安全を確保します。視覚的な禁止表示は、子どもたちが瞬時に意味を理解しやすく、即時的な行動抑制に効果があります。
2.ネガティブな指示がストレスを引き起こす可能性
応用行動分析(ABA)の観点では、禁止のメッセージはストレスや不安を引き起こすリスクがあります(Cooper et al., 2007)。特に感受性の高い子どもにとっては、禁止の指示がストレスとなり、行動の意欲を削ぐことがあるため、使用の際には適切な配慮が必要です。
3.補助的な方法としての使用が推奨される
禁止カードはあくまで必要最小限にとどめ、ポジティブな支援を優先することが望ましいです。危険防止を目的とした場面では有効ですが、禁止ばかりが強調されると、子どもたちが自主的に行動する力が抑制される可能性があります。
「促進」の視覚支援の効果と影響
「プレイルームであそぼう」のように、子どもたちが取り組むべき行動を具体的に示す視覚支援は、子どもたちの行動をポジティブに促すための強力なツールです。

1.「するべきこと」が明確に伝わる
子どもたちが次に何をするべきかが具体的に示されることで、活動内容を理解しやすくなり、不安や混乱が軽減されます。TEACCHアプローチの研究(Mesibov & Shea, 2010)によると、具体的でポジティブな指示は、行動の予測可能性を高め、安心感を提供します。
2.ポジティブな指示が自己効力感を高める
代替行動を示すことによって、禁止するのではなく、どう行動すればよいかが明確になるため、子どもたちは自信を持って行動できます。Mesibov & Shea(2010)の研究では、構造化された環境下での視覚支援が、子どもたちの適応行動を向上させる効果が示されています。
3.自主性の育成
ABAの観点では、ポジティブな指示を優先することで、子どもたちの自律性や自己決定力が高まるとされています(Cooper et al., 2007)。ポジティブな支援を通じて、子どもたちが自分で考えて行動する力を育むことができます。
ともともでの実践:視覚支援の効果的な使い分け
ともともでは、視覚支援を「禁止」と「促進」の両方を使い分け、状況に応じた柔軟な対応を心がけています。子どもたちの安心感を優先しつつ、危険な状況や守らなければならない場面では、適切に「禁止」を伝えることも大切です。
1.ポジティブな支援の優先

「プレイルームであそぼう」などの具体的な行動指示を通じて、子どもたちが自主的に行動できる環境を提供します。
2.必要な禁止の使用

危険箇所や緊急時には、「はいりません」のような禁止カードを使用し、安全を確保します。
まとめ
視覚支援を効果的に活用するためには、「禁止」と「促進」の使い分けが重要です。
1.ポジティブな指示を優先して安心感や自主性を育てる
子どもたちが次に何をすればよいかを具体的に示すことで、積極的に行動する力を引き出します。
2.「禁止」の視覚支援も必要に応じて活用する
危険回避や特定の行動を避ける際には、「禁止」のカードを適切に使うことが有効です。
3.状況に応じて柔軟に視覚支援を使い分ける
子どもたちに最適な支援を提供するために、両方のアプローチをバランスよく活用しましょう。
最後に
視覚支援を上手に取り入れることで、子どもたちが安心して学び、成長できる環境を整えることができます。ともともでは、理論に基づいた視覚支援の実践を通じて、子どもたちのより良い未来を支援しています。視覚支援の効果を理解し、最適な使い方を取り入れて、子どもたちのサポートに役立てていきましょう。